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L change the WorLd (2008)
2008 / 03 / 31 ( Mon )
なんだか、得体の知れない圧倒的なものに包まれていくような、そんな観終えたときの印象。中田秀夫が本作を撮るのは去年の夏ごろ、「映画芸術」のインタビュー(『怪談』公開前)で知った。なんでまたそんな事態に!?と驚いたんだけど。結果的に観逃さないでおいて正解だった。

L change the WorLd

大体おれ部外者なわけで、原作漫画も、金子修介の撮った前2作の劇場本編も、当然アニメもちっとも知らない。知ってるのは、中国やベルギーでインスパイアしたあまりガキが猟奇的な事件起してるってことくらい…。積極的にトレンドをキャッチアップしようなんていう、おれはそんな歳じゃあないんだよ!中田が撮ろうが、そんな予習が必要そうな映画なんか観ないよ!…とおもってたの。んま、実際は何度かツタヤの棚の前までいって、「二本撮りのくせにランタイム120分て…」と躊躇して借りなかったのは事実。けれど、これだけの満足を体験してしまっては、むしろ金子修介の前2作を観ずにおれたのは幸福なのかもしれないなあ、などとかんじている。少なくとも、この無茶な話しを丸呑みしたうえで楽しめた。

事情を知らなすぎる通りすがりが粗筋を書くのも躊躇われるし、たいだい間違っていそうなので、書かない。正直序盤はつらかった。スピンオフ作なんだから、仕方ないかなとおもいつつ、要は前2作からのお約束を引き継いでゆく段取り?そういったシーンはさすがにぽかんとした。松山ケンイチ演ずるLという風変わりな青年が主人公なのはわかるが、それ以外さっぱりわかんない。なぜかタイの貧村がアウトブレイクしている…。そうこうして疫病が拡大しないように寒村は(おそらく米軍の手で)爆破炎上。その後日本に舞台が移って、鶴見辰吾と工藤夕貴(…どっちも最高)がいる研究室のあたりもさ、なんでこんなに説明的にカット重ねるのか、そのへん違和感があった。でも、藤村俊二がイキナリ死ぬあたりから物語がスパークし始める。

こう…お着せの企画で、ある程度実績が残せるのは確実な筈なのに、そこそこで終わらせない凄みがあった。決定的だったのは鶴見辰吾が死ぬところ。同僚の工藤の姦計にひっかかって、娘(福田麻由子)の前で無残すぎる死を迎えるこのシーン。ここでため息が出た。いまの日本映画にもっとも必要なものがあった。これだけで料金分の満足は十分に満足を得られたのだが、暫く経って先ほどの娘がね…物凄い目つきで工藤夕貴、高嶋政伸らを睨む。親を目の前で殺された恨み。彼女の目は復讐で濡れている。この目が大変すばらしい。復讐にたぎる12歳の出来上がり。工藤夕貴を向こうに、一歩も引かず立つ。ナンチャンはあれはあれで全然OK。本人がFBIだって云ってるんだから問題なし。佐藤めぐみの異様なキャラ造形も見ごたえがあった。

L、寒村の生き残りの子供、復讐者の少女…この不安すぎる三人がチャリンコ駆って街をゆく。その後、国際線をムニャムニャ…アレ!?ことしのはじめに、こんな映画夢想して、脚本書いたよ!?…ま、それはいいや。スタッフに目を移すと、当然ながら音楽は川井憲次。押井ん時とちがってゴージャスでありつつ主張を抑えたタッチ。ちなみに特技監督は神谷誠、特殊メイクは西村喜廣。脚本は小林弘利(知ってるのだと『アタゴオルは猫の森』とか『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』など…どんなフィルモグラフィだよ)なのだが、相当数の人数が関わっているようで、脚本協力には會川昇や古澤健の名もあった。…なんとなく担当仕事が透けてみえるよーな。

なんかさー…こんな集客マシーンの権化みたいな企画で、こんな贅沢な画が成立していることに驚く。観ながらさ、失礼ながらこれって誰しもが夢見た、そんな映画だなって。少なくともおれはある時期まで、こんな娯楽映画を黒沢清に撮ってほしかった。科学者が凄惨きわまりない死に様を迎え、ジャンボ機がジャックされ空港第2ターミナルに突き刺さらんとする画を。確かに振られた企画?なのかもだが、中田は自由闊達にボリューム満点な画を撮っちゃってる。他方、黒沢は昨今、クチから泥を吐かせるくらいで精一杯…。どちらが映画的完成度が高いかはさておいて、ともかくおれはこの作品、好き放題が許された安牌ネタでありつつ、でも興奮もキッチリ詰まった精神的にリッチな映画だと、心の底からおもった。なにせシャワーシーンもあるし。中田は敬意表すべき立派な変態だ。

L change the WorLd

(29日、ソラリス3)
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