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ウルトラミラクルラブストーリー (2009)
2009 / 06 / 16 ( Tue )
驚愕した。ゆるい感性一本槍な女流監督による、しょせん人気イケメン俳優を配した、単なる町おこし映画かなんかだろ?とまったく期待せず、なんのきなしに観たのだったが…たいした映画だとおもった。なんつうのか、おれの理解が行き届いていないのか、まだ素直にこの才能を認めるのに躊躇する。うーん…最初は自分探し系帰農映画かとおもいきや、黒沢清なんかの世界に近接した怪作だった(横浜監督本人も黒沢清の影響受けてる模様…ソースはいま出てる「映芸」な)。ある種のホラーだし、愛に殉じてくトラジディな怪物映画だと捉えた。そうすればこの違和感の塊のようなタイトルにも合点がゆく。…そう、黒沢清がなしえなかった片田舎ファンタジック・ホラー・コメディの域に易々到達(そして『サッドヴァケイション』で息も絶え絶えに到達した青山真治が北九州で地団駄踏む)。以下、ネタがぱっくり割れてます。

そこは青森…。暗にほのめかす程度だがアスペルガー症候群で農業やってる青年(松山ケンイチ)とその祖母(渡辺美佐子)、無農薬野菜の行商で暮らしてる。冷静に、ぶっちゃけギリギリで社会生活アウト気味の松ケン、ある日麻生久美子に運命の出会いをする。麻生はそもそも東京に暮らしてたものの、ARATA(本作でのARATAの起用方法を全映画人は倣うべき)に死別する格好で振られてしまい、自分探しコミコミで幼稚園の臨時の保母さんになる。その疲れ果てたアラサーな麻生を見て松ケンは本気で一目ぼれ。周囲をあきれさせつつ、でも絶妙な距離のとられ方で(関わりあいになると兎角厄介だという田舎特有の処世観から)、クソ純愛を成就せんとストレート投げ続ける松ケン、そしてチンプンカンプンな麻生含め周囲。そして、世紀の大革命。なんせ原田芳雄はリタ処方してくれなかったもんな!そんなこんなでADHDとHB-101の、革命的(まさにウルトラでミラクルな)マッシュアップが果たされる…!

とにかく松ケン演じるキャラクターを、「天使」とか「才能」とかいう安易な言葉で飾り立てず、それでもそれらの文句をあっさり軽く凌駕する…ある意味、途方もない「怪物」として至極当然に描ききったことに興奮する。前半のドラッグドでない松ケンは、若手ナンバーワン憑依系俳優の名に恥じぬウザったさ。観ててブッ殺したくなる(ほめことば)。障害を、きちんと面倒くさいものとして周知しきる力づよさ。そして後半…自分勝手なイニシエーション経て、麻生の前に精一杯全身全霊かけて、気取る。だってすきな、麻生に相手にしてほしいから…。なんつうのか…ミラクルが迸りだす。クチからゲロがまろび出す。JAの倉庫で、麻生と一緒の帰り道、そして農作業中…。何度でも云ってやるが、ウルトラなミラクルが待っている。

んまー…おれの感性では、この作品を正確に見切れているとは云い難いです。要はよ?『遠雷』とか『おもひでぽろぽろ』みてーな話しだろ?とタカくくってたら(それでも十分凄いんですが)、透徹さ具合からいって、むしろ『いのちの食べかた』だった…!みたいな衝撃がある。おれが書くと果てしなく信用がないんですが、でもこれは判断留保しつつも、ぜったい観ておくべき作品。こんな起伏の激しい話しで、登場人物ほとんどが善人というのにも、驚く。

松ケンと麻生久美子がとぼとぼと歩く。遠くで建機がライトに照らされて、それから間髪云わせずにどっかのDQNが季節はずれの花火に興じる。とぼとぼ歩くふたり。麻生がおしゃべりを続け、松ケンがそれ続かない。よろよろ、手を振りながら帰れと促す。えー!?困惑しつつも安堵する麻生。ここまでワンカット!なんなんだ!かよう切れずに延々と芳醇な世界を掻きとるキャメラは近藤龍人。音楽は大友良英(エンドテーマは100s)。VFXプロデューサーで黒沢組常連の浅野秀二…つうことで、素直にスタッフも凄い。熊に現実に遭遇し恐怖した横浜聡子の、次回作もやはりとんでもないだろうし、観たいです。

ウルトラミラクルラブストーリー

(13日、シネマート新宿スクリーン1にて)
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