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人魚伝説 (1984) ※池田敏春監督追悼上映会
2011 / 04 / 20 ( Wed )
上映後、本作のPDであり池田敏春とは日活撮影所助監督の同期でもある根岸吉太郎によるトークがあった。早稲田在学中に石原プロの助監督バイト時に培ったアクション感覚(具体的に小澤啓一や澤田幸弘の名前が)、そういった池田敏春のエンターテイメント性を高く評価しつつ、それでも本作は「観るのが嫌だった」。プロデューサーとして負債を抱えたせいもあろうが、その感覚はなんとなくわかる。だがそんなん凌駕するほど力強い。なお本上映会は3.11前に企画。それってマンマだろ…と思いつつ、根岸の云う「過剰な執念」という言葉が印象にのこった。そういう映画。

リゾート施設建設にゆれる、でものどかな海沿いの町、波摩町。べつにそこいらにいる海女さん(白都真理)とその旦那(江藤潤)と、町の有力者の息子たるボンボン(シャブの清水さん)という三人がまずは登場。近畿電力と地元選出の政治家とが組んで、どうも町を挙げて原子力発電所を誘致しているらしい。だいたい原発ってのがどんなものがもしらない、でもなんかわからないけど、おっかない、そんな程度の認識でコトがすすんでいる(とはいえ、このあたりはうっすらとしか触れられない)。地元民の都合はそこにはない。しらないで誘致していれば、一生M9.0クラスが来ない前提で過ごせば交付金もガンガンもらえてハッピーだったかもしれないが、海女と酔っ払いの旦那の夫婦はきがつく間もなく真実ってやつに立ち入ってしまうのであった…。目の前に旦那がゆらゆらと下りてきて、白都じしんも負傷するあのシーンは鮮烈すぎる。

陰謀や策略になすすべもなくかかってしまい、無学な漁師…とは云い切れない人のよさや地元での平均レベルの教養のせいで、本当にわけもわからず命を狙われたりする。状況だってさっぱりわからない。これって今回の震災と事故と被災とまんまおなじでしょ。濡れ衣着せられた白都は、シミケンに世話されて因習渦巻く孤島の淫売宿の二階に身を潜める。窓を開けて土建屋のプラントに目をやる…モノクロのスチルがインサート、おもわず嘔吐する…これって被爆のイメージ?駐車場出るときおれ根岸学長に聞きゃあよかったのだが…。この時点で直接白都に原発云々という話しは伝わっていない。シモの接待で近畿電力社員どもはその春を鬻ぐことで有名なその孤島におりたつ。鮮血飛び交う復讐の舞台となる。真相を知る白都、「原発やで…そんなクダランもんのために死んだんか。アンタ、成仏できひんな」。

「最初っから田舎の土建屋に発注するきなんかないよ」。いつまでたっても、原発の恐怖そのものが示されることはなかった。ある意味で犯人探しなのだが、原発って存在があまりに巨大かつ純粋悪として奉るしかないせいもあって、やもすると添え物に原発が扱われてるのも仕方ないのかな~っておもってた。だが旦那の復讐を守り神の地蔵に誓う白都を観てそんなもんじゃないことを痛感する。地蔵さすりながら「なにもかも、滅茶苦茶になるくらい、すごい嵐にしてください」。わるいやつはきりがない。それでも銛を砥いで時を待つ、以後すべてを超越して白都は鬼神と化す…「どうせキチガイや!」。そう、ある意味過剰すぎてファンタジック。3.11通過してしまって、すべてが押し流されてしまったおれらにゃデ・パルマ『キャリー』のノリでネイチャーの怒り表したとは到底かんがえられない(そんな単純な話しでないでしょ)。

本作は根岸がいみじくも「過剰な執念」と云い切った様に、抜けがなくすべてがひたすら圧倒的(根岸、冗談めかして「(おなじくクライマックスに大量に人が殺される)『十三人の刺客』じゃないんだから」と云って会場を和ませた)。たとえそれが桁外れの妄想や単にカットが切れないだけだとか、または激しすぎる暴力や性愛描写でしかないのかもしれない。だがいずれにせよ、いまの停滞感や鬱積を、電力会社や政治家に対し(目下飛散しているであろう放射性物質みたいな)薄ぼんやりとした不満ではなく、ストレートに目で見て判断できる痛みや暴力で世に問える作家がいるだろうか?もし仮に3.11をテーマにしてフィクション撮ったとしても、誰も四半世紀前の本作に到底かなわない。なぜって、今回のケースで顕然したほとんどの要素にすでに手が付けられているから。そういう意味でもいま観られるべき作品だった。

人魚伝説 (1984) ※池田敏春監督追悼上映会

(19日、フォーラム3)
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